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メディカルフィットネスとは、医療的要素を取り入れたフィットネスのことを指します。超高齢社会に入り医療・介護における社会保障費膨張の問題が逼迫している現在の日本において、大きな注目を集めている仕組みです。

例えばメディカルフィットネス施設では、生活習慣病の予防や改善のために運動が必要な方に、安全で効果的な運動指導を提供します。運動が苦手な方や持病がある方も安心して運動を続けられることで、病気の予防改善が期待できます。また、メディカルフィットネスは、企業の健康経営や生涯スポーツとも親和性が高いため、地域社会の健康づくりに貢献しながら着実に広がりつつあります。

メディカルフィットネスの定義definition

 

メディカルフィットネスとは?

「メディカルフィットネスとは?」という質問に対して、関係者であっても様々な回答が返ってくるのが現状です。「医療機関が運営するフィットネス」と答える人もいれば、厚生労働大臣認定の「運動型健康増進施設」と答える人もいるでしょう。また、はっきりした答えがなくわからない方も多いのではないでしょうか。

「メディカルフィットネス」という言葉は、1985年ごろ医療機器メーカーによって作られた造語です。「日本メディカルフィットネス研究会」では、下記のように定義づけしています。

日本メディカルフィットネス研究会のメディカルフィットネスの定義
  • 狭義では、医療機関が運営するフィットネス
  • 広義では、医療的要素を取り入れたフィットネス
日本メディカルフィットネス研究会について

公益財団法人 日本健康スポーツ連盟が運営。メディカルフィットネスの普及に向けた活動が行われている。
日本健康スポーツ連盟は健康増進施設・指定運動療法施設の申請受付や現地調査を行っている団体です。

メディカルフィットネス研究会 https://www.medical-fitness-jp.com/

公益財団法人 日本健康スポーツ連盟 http://www.kenspo.or.jp/

「メディカルフィットネス」は、最近できた新しい言葉や考え方というよりも、以前から存在する仕組みなのです。まだまだ一般的に広く浸透してはいませんが、医療的要素を取り入れたフィットネスの考え方は、これからの日本の社会構造上においても重要であることは確かだと言えるでしょう。当メディア「メディカルフィットネスナビ(メディナビ)」では、その規模や運営者、認定の有無を問わず「医療的要素を取り入れた指導(サービス)を行うフィットネス」を「メディカルフィットネス」として情報発信しています。

メディカルフィットネスの範囲

メディカルフィットネスで提供するサービスの範囲は、図のように「リハビリ」「介護ケア・介護予防」「生活習慣病改善」「メタボ・ロコモ予防」「一般、健康維持・増進」「アスリート強化、パフォーマンス向上」と非常に幅広い分野に及びます。

また、それらのサービスを提供する施設としては「リハビリテーション施設」「介護・介護予防施設」「疾病予防運動施設(医療法42条施設)」「指定運動療法施設」「運動型健康増進施設」に加え、様々な規模の医療的要素を取り入れたフィットネスクラブやパーソナルジムなどが挙げられます。

このようにメディカルフィットネスの対象になる範囲はとても広く、運営母体の特徴や提携する医療機関や医師の専門分野などにより、提供するサービスや対象は異なったり、複数に及んだりします。

メディカルフィットネスの特徴

ディカルフィットネスの特徴

例えば、施設内にフィットネスマシンが設置されているだけでは、メディカルフィットネスは成立しません。メディカルフィットネスでは、医療的要素を取り入れた指導が行われることが前提となるため、利用者への丁寧かつ的確なサポートが不可欠です。また、メディカルフィットネス施設においては、利用者の年齢・性別・体組成データ・生活習慣・既往症などの情報をもとに、一人ひとりに適した運動やトレーニングの指導が行われるでしょう。

メディカルフィットネスの利用者の中には運動が苦手な方も多く、体を動かすにあたって配慮が必要な方もいます。マシンを利用する際のサポートについても、細やかな対応が求められます。それが「安心・安全・効果的」に運動を行えるメディカルフィットネスの特徴でもあり、差別化のポイントでもあるのです。これらは運営母体を問わず、共通して言えることではないでしょうか。

健康増進のための運動を安全かつ適切に行うことができる施設を、厚生労働大臣が認定する仕組みがあります。それが「運動型健康増進施設」の認定です。そのうち一定の条件を満たすと、「指定運動療法施設」という運動療法を行うのに適した施設として指定されます。「健康増進施設」「指定運動療法施設」は厚労省のお墨付きがあるメディカルフィットネスと言えます。(詳しくは健康増進施設・指定運動療法施設についてのページをご参照ください)。

また、厚生労働大臣認定「運動型健康増進施設」のうち、厚生労働省が指定する「指定運動療法施設」においては、医療機関との連携(医師の運動処方箋が必要)のもと施設利用者の会費など利用料が「医療費」とみなされるため、「医療費控除の対象」となります。利用者側にとっては費用面でのメリットがあると言えるでしょう。運動型健康増進施設認定、指定運動療法施設指定が条件となりますが、メディカルフィットネスを述べるうえでは欠かせない制度です。

しかし、利用者側の観点としては、医療費控除の申請をして還付金がもらえるといった金銭的なメリットよりも、「施設の利用料が医療費とみなされる」という事実による施設への信頼感や医療的な指導が受けられるという安心感により価値を感じる傾向にあるようです。このことは、施設のプロモーション、他のフィットネスクラブとの差別化にも活用することができます。

また、医療機関が運営するメディカルフィットネス(42条施設※疾病予防施設)には、多くの特徴があります。診療報酬点数に加え、「フィットネスジムの会費が収入として見込めること」「本体の医療機関とメディカルフィットネス施設で予防から治療まで一貫して患者さんに関われること」「メディカルフィットネス施設については積極的な広告が可能なため、医療機関の認知向上につながること」などが挙げられます。

なお、厚労省の「運動型健康増進施設」「指定運動療法施設」の認定・指定を受けない42条施設以外のメディカルフィットネス施設においても、医療機関との連携はひとつのカギとなるでしょう。

メディカルフィットネスが注目される背景background

 

健康への意識・価値観の変容

健康への意識・価値観の変容

私たちは『人生100年時代』を迎えるにあたり、介護を考えるうえで身体的、金銭的不安がぬぐえない状況だと言えます。また、老後に旅行や食事を楽しみ、生活の質を向上させるためにも健康寿命の延伸は大切なテーマです。メディカルフィットネスは、まさに健康寿命の延伸において有効であることは言うまでもありません。

ここ数年増加傾向にある24時間型のフィットネスジムや、一般的なトレーニングジムでは実現できない、一人ひとりの体調や体質、生活習慣などを考慮した運動指導ができるメディカルフィットネスは、健康増進・疾患予防への貢献がますます期待されます。

国の施策とメディカルフィットネス

超高齢社会を迎えた日本では、国民医療費及び介護保険費用削減を目的として、医療的な側面での運動を促進しています。国の施策においても、メディカルフィットネスが果たす役割は計り知れません。ここでは国の健康づくりのための施策の例を紹介します。

例1:健康増進施設制度

厚生労働省(旧:厚生省)が昭和63年に国民の健康づくりの推進を目的に、一定の基準を満たしたスポーツクラブやフィットネスクラブを認定して普及を図るための「運動型健康増進施設認定規程」(昭和63年厚生省告示第273号)を策定。「運動型健康運動増進施設」として大臣認定を開始しました。

例2:医療法第42条施設

平成4年の医療法改正により、医療法人の附帯事業としての運動施設開設が認められたものです。医療法42条第5号には「疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設であって、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置」とされています(医療法人は生活習慣病などの疾病予防のためにフィットネス施設を併設することにより、利益活動が可能となりました)。

例3:特定健康診査・特定保健指導の義務化

平成20年4月より、内蔵脂肪型肥満に着目した特定健康診査・特定保健指導の実施が、医療保険者(国民健康保険・被用者保険)に義務づけられました。※40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者が対象
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/index.html

出典:国民健康づくりの最近の動向(厚生労働省健康局 健康課)資料7より抜粋

例4:健康日本21(第2次)

厚生労働省は「健康日本21(第2次)」において「健康寿命の延伸」に取り組んでいます。方針は下記の通りです。

  • 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
  • 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD(非感染性疾患)の予防)
  • 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
  • 健康を支え、守るための社会環境の整備
  • 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

メディカルフィットネスの運営母体mother

メディカルフィットネスは、病院・診療所(クリニック)といった医療機関に加え、介護施設、治療院、自治体、一般的なフィットネスクラブ、一般企業に至るまで、どんな運営者でも参入することができます。また、理学療法士、アスレティックトレーナー、パーソナルトレーナー、健康運動指導士など個人の有資格者によるパーソナルでの小規模なメディカルフィットネスも新型コロナウイスル感染予防の観点からも注目されています。

病院・クリニック

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

医療機関が運営するメディカルフィットネスの場合、医療法第42条に基づき、医療機関の附帯事業として運営できます。高血圧、高脂血症、糖尿病を主病とした場合、診療報酬点数の「生活習慣病指導管理料」が算定できるほか、メディカルフィットネス施設としては積極的なマーケティングによる集客や患者の囲い込みも可能です。毎月の会費や施設利用料として外部収入も確保できます。
そして、地域のかかりつけ医として病気の予防から関わることで、住民の方々と早期に密接な関係性を構築することも期待できます。結果、地域に住まう方々の健康維持において、さらなる貢献を果たせるでしょう。

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介護施設や関連事業者

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

介護施設がメディカルフィットネスを行うことで、健康寿命の延伸という多くの地域で抱える課題にアプローチできます。地域住民の方々を予防医療の視点からのサポートし、健康づくりから介護まで安心したサービスを提供するという大きな役割を果たします。また、経営側のメリットとして、介護施設利用者予備軍の囲い込み、増加する競合介護施設との提供サービスにおける差別化が可能です。介護施設の経営への寄与も期待できます。

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接骨院・治療院等

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

接骨院や治療院などがメディカルフィットネスを立上げ・運営することで、通院されている既存のお客様の囲い込みが期待できます。接骨院・治療院と「予防医療、未病、介護予防運動」といったフィットネス的要素との相性がとても良く、運動の意義を明確に伝えられます。メディカルフィットネスによってお客様が運動をする動機づけになり、さらに運動の継続にもつながるでしょう。これまで培った施術スキルと施設特性を活用し、安定した顧客獲得ができる点が、接骨院・治療院などがメディカルフィットネスを運営するメリットだと言えます。

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自治体

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

自治体が運営するメディカルフィットネス施設の場合、地域の健康課題を明確にし、課題解決に貢献することが求められます。また、地域資源の活用、地域健康維持増進事業などとの連携を図ることも大切です。一概に地方自治体が運営する健康維持増進施設といっても、様々な運営方法や仕組みがあります。だからこそ地域に適した施設運営環境を整え、最良の地域連携型のメディカルフィットネスを立ち上げることが理想です。民間企業や教育機関、その他関連する団体などと共に取り組むことも、事業を成功させる要因となるでしょう。

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一般企業

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

一般企業が運営するメディカルフィットネス施設は、事業や既存商品などとのシナジー効果を見込む場合と新規事業として立ち上げる場合の2パターンがあります。
前者は企業イメージと施設コンセプトをうまく結びつけることで相乗効果が望め、後者では健康事業分野への参入によって、これまでとは違う角度から地域課題解決のためのサポートや地域貢献を果たせます。メディカルフィットネスを通して実施される社会貢献については積極的にプロモーションすることで、企業のイメージや価値の向上にもつながるでしょう。

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理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

理学療法士(PT)やアスレティックトレーナー(AT)、パーソナルトレーナー等

PT、AT、パーソナルトレーナーら有資格者がメディカルフィットネス施設を開業、運営する場合、小規模パーソナル型施設が大半になると考えられます。そのため、開業時のイニシャルコストが通常の施設開業に比べて大幅に抑えることができます。また、主にオーナー自身がパーソナルで対応することが多いので、人材の育成や確保に頭を悩ますケースも少ないと言えるでしょう。
提供するサービスのクオリティの高さが競合との差別化ポイントになるので、集客の仕組みづくりをしっかり行うことで安定した収益化が図りやすくなります。

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一般のフィットネスジム・スポーツクラブ

一般のフィットネスジム・スポーツクラブ

すでにフィットネス領域を事業運営している一般のフィットネスクラブやスポーツクラブの場合、メディカルフィットネス施設としての機能を備えるための対応に困惑することもあるでしょう。
しかし、既存の事業にメディカルフィットネスの要素を追加することで競合他社にはない付加価値がもたらされ、収益性の増加も期待できます。メディカルフィットネスという附帯事業による収益が既存収益に加算されることになり、さらには新規リニューアルによる広告宣伝効果も高まり、総合的な集客をも見込むことができるでしょう。

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