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2024.08.30
このような方におすすめ 主な対象施設 厚生労働大臣認定 健康増進施設、厚生労働省指定 指定運動療法施設、医療機関、医療法42条施設、メディカルフィ…
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アスレティックトレーナーが活躍する場のひとつに、医療的要素を含むフィットネスであるメディカルフィットネスがあると語る大貫崇氏。本記事では、メディカルフィットネス施設にアスレティックトレーナーを配置する運営方法のアイデアを伺いました。
Contents
2004年、タウソン大学運動学部アスレティックトレーニング学科を卒業。2006年フロリダ大学大学院で修士号を取得。2016年にBP&CO.を立ち上げる。
現在、BP&CO.代表、大阪大学医学系研究科健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室特任研究員、Improve KYOTOアドバイザー、JATO(ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構)理事を務める。資格取得はBOC-ATC、NSCA-CSCS、NASM-PES、MBSC認定CFSC、PRT。
前回のインタビュー
大貫崇氏インタビュー アスレティックトレーナーのポテンシャルを活かせるメディカルフィットネス
アメリカのアスレティックトレーナー資格認定委員会公認のATC(以下アスレティックトレーナー)がメディカルフィットネス施設で働く場合、医学的エビデンスに基づいた運動指導のための、双方向のコーディネーターとして活躍できると思います。
アスレティックトレーナーは、スポーツ現場での怪我の評価や応急処置、競技復帰に向けたリハビリ、治療、テーピング施術などをおこなう資格です。怪我の状態を見て医師の診察が必要かどうかを判断する、医師の診察が必要ない場合でも競技復帰のためのストレッチやリハビリを含むコンディショニングをおこなうスキルをアスレティックトレーナーは持っています。
さらに、アスレティックトレーナーは医師や理学療法士を含むスポーツ医学の専門家とコミュニケーションを取ることができるため、そういった専門家と連携してメディカルフィットネス施設の利用者が抱える身体的問題の解決に向けて取り組むこともできるでしょう。
健康運動指導士は運動処方箋をもとに運動プログラムを作成できる資格、健康運動実践指導者は運動の実践指導ができる資格です。それに対して、アスレティックトレーナーは傷病の評価や施設内外の専門家につなげる役割を持つ資格であり、メディカルフィットネス施設での役割は大きく異なります。
たとえばメディカルフィットネス施設の利用者が施設外で怪我をしたり、なんらかの原因で体に痛みを覚えたりした時に、アスレティックトレーナーは怪我や痛みの様子をみて医師による診察が必要かどうかを判断できます。ほかにも、怪我や痛みがある状態でどのような運動ができるか・どのような運動をするべきか提案することも、アスレティックトレーナーならではの仕事と言えます。
メディカルフィットネス施設がアスレティックトレーナーを配置することで、体調に不安を持つ利用者でも安心して運動指導が受けられ、サービスの質の向上も期待できるのではないでしょうか。
また、公益財団法人日本スポーツ協会認定のアスレティックトレーナー(JSPO-AT)は、アスレティックトレーナーの資格だけでなく他の国家資格を持つ方もいます。JSPO-ATのうち三割以上がはり師・きゅう師の有資格者であり、他にも理学療法士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師などの医療系国家資格を保有するJSPO-ATも全体の二割程度と少なくありません。(※1)医療系国家資格を持つJSPO-ATもまた、健康運動指導士・健康運動実践指導者とは異なる活躍ができると思います。
※1 公益財団法人日本スポーツ協会 第一回 日本のトレーナー実態調査 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)版 報告書(2018年)
アイデアのひとつとして、メディカルフィットネス施設の利用者が体に痛みや不調を感じ、アスレティックトレーナーに相談するところをスタート地点とする流れをご紹介します。
まず、利用者が体の痛みや不調などをアスレティックトレーナーに相談します。相談を受けたアスレティックトレーナーは、利用者の話を聞いたり痛みや不調の出ている部位を確認して症状を評価します。ここで状態を把握し、医師による治療が必要かどうかを判断します。
もしも医師による診察や治療が必要と判断した場合はアスレティックトレーナーが提携先の医療機関に連絡し、利用者を送ります。すぐに医療機関の受診が必要な段階ではなく様子を見る場合は、症状緩和のためのテーピングやストレッチなどの処置をし、経過を見て医師による診療の可否を判断するサイクルになると考えられます。
このサイクルは、アスレティックトレーナー、医師(医療機関)、利用者(患者)の三者にとってメリットがあります。
アスレティックトレーナーは多くの症例に携わることができ、経験を積むことで技術の向上が期待できます。
メディカルフィットネス施設の利用者の幅は広いため、スポーツの現場に勤務するよりも多くの症例をみられる可能性があります。
さまざまな症例にアプローチする経験はアスレティックトレーナーにとって一生ものの財産になるでしょう。
医師(医療機関)はアスレティックトレーナーに仕事の一部を任せられるため、医療機関を訪れた患者の診療時間が短縮できる可能性があります。
患者の痛みや不調に対して様子を見る必要がある時、医師が痛みや不調を緩和するアプローチをすることもあります。そうした緩和のためのアプローチに時間を使うことで、一人あたりの診療時間が延びるため、一日に診療できる患者の数に影響するなどの問題にもつながります。医療機関で治療を受ける段階にない痛みや不調への対応をアスレティックトレーナーが担うことで、医師はより緊急性の高い患者の治療に専念できると考えられます。
メディカルフィットネス施設の利用者は、体の痛みや不調についてアスレティックトレーナーに相談できるため、安心感を得られます。医療の専門家ではない利用者は、体に痛みや不調がある時、医療機関に行くべきかどうか・どの診療科に行くべきかが判断できないことがあります。こうした悩みや不安をアスレティックトレーナーに相談することで、適切な対処ができます。
また、医療機関を受診する際は待ち時間がありますが、メディカルフィットネス内のアスレティックトレーナーへの相談であれば医療機関での待ち時間ほどの時間をかけずに痛みや不調について相談できます。医師による治療は必要ないとアスレティックトレーナーが判断した場合は、その場で緩和のための対処が可能です。もしも医師による治療が必要な場合はアスレティックトレーナーが提携先の医療機関に連絡をするため、みずから医療機関へ行くよりもスムーズに治療を受けられると考えられます。
利用者(患者)と医師の間にアスレティックトレーナーを挟むことは一見すると無駄にも思えますが、結果的にはアスレティックトレーナー・医師(医療機関)・利用者(患者)の全員にとってメリットがあることなのです。
過去の事例で、金曜日の夜に胸の痛みを覚えて相談に来られた方をアスレティックトレーナーがみたところ、危険な状態だと判断したことがあります。アスレティックトレーナーがすぐに医師へ連絡を取り診察を受けたところ、その方は心不全を起こしており即手術になったことがありました。
もしもこの時アスレティックトレーナーが身近にいなければ、胸の痛みへの対処は月曜日になった可能性があります。その場合、事態はより深刻になっていたかもしれません。
何かあった時の相談相手としてアスレティックトレーナーが認知されていたおかげで、早急に対処できた事例だと思います。
このように、メディカルフィットネス施設がアスレティックトレーナーを配置すると、利用者だけでなく、メディカルフィットネス施設で働くアスレティックトレーナーや提携先の医療機関も恩恵を受けられます。
このサイクルは、医療機関とメディカルフィットネス施設が緊密な関係を築くことで成り立ちます。アスレティックトレーナーや医師の能力を十分に発揮するためにも、メディカルフィットネス側はアスレティックトレーナーと医師をつなげるホットラインを整備することが大切です。また、提携先の医療機関にも、アスレティックトレーナー経由の患者を受け入れるための体制を整えてもらう必要があるでしょう。
残念ながら、日本ではアスレティックトレーナーの知名度はまだ高くないため「アスレティックトレーナーが在籍している」と宣伝しても、メリットが伝わりにくいという懸念があります。
そのため、メディカルフィットネス施設に入会する際に、利用者へ向けてアスレティックトレーナーがどのような資格かあらかじめ伝える必要があります。体の痛みや不調を相談できることを説明することはもちろん、コンシェルジュ・コーディネーターなどの、利用者がイメージしやすい名前で紹介することも重要でしょう。
また、アスレティックトレーナーの着用するユニフォームの色を変える、目立つ場所にバッジを着けるなど、ひと目で分かる工夫も大切です。
アスレティックトレーナーの実力を十二分に発揮するためには、メディカルフィットネス施設に勤務するスタッフ全員に、アスレティックトレーナーの役割や医療機関との提携について周知を図ることも求められます。
スタッフ教育を徹底することで、利用者の悩みをアスレティックトレーナーへ誘導しやすくなります。
年々、日本人の健康意識は高まっていると感じます。自分の健康に投資をする人は今後も増えると予想されるため、一人ひとりの体の悩みに合わせたアプローチができるアスレティックトレーナーの需要は今後も高まるはずです。
メディカルフィットネス施設の経営を考えるうえで、施設の採算を考えることも重要です。アスレティックトレーナーを配置する施設が採算を取るためのアイデアのひとつに、パーソナルレッスンの充実があります。パーソナルレッスンの利用者にアスレティックトレーナーへの相談サービスを提供することで利用者や会費収入の増加が期待できます。サービスの提供方法を工夫することで、アスレティックトレーナーを雇用するメディカルフィットネス施設が採算を取りやすくなるのではないでしょうか。
そうですね。アスレティックトレーナーにとっても、メディカルフィットネス施設で働くことにはさまざまなメリットがあると考えられます。
日本のアスレティックトレーナーは、プロスポーツの現場で活躍することを希望する方が多い印象ですが、プロスポーツチームの数はアスレティックトレーナーの数ほど多くはありません。また、アマチュア・社会人チームでのアスレティックトレーナーの活動はほとんどがパートタイムやボランティアであるなどの問題を抱えています。メディカルフィットネス施設がアスレティックトレーナーの活躍の場として浸透すると、アスレティックトレーナーの雇用を生み出すことにもつながります。
個人的には、大きいチームの組織の一部に所属するよりも、小さいチームのトップに立った方がアスレティックトレーナーとして多くの経験を積めると思います。傷病に対してさまざまなアプローチを試行できる場は日本ではまだ少ないため、メディカルフィットネス施設で働くことは非常に貴重な経験となるでしょう。
私がアメリカの大学院に在籍していた頃、アスレティックトレーナーの実習でとある高校に配属されたことがありました。
その高校では1,000人近い選手たちを私1人で見なくてはいけない日々が続き、多くの経験を積むことができました。非常に忙しい生活でしたが、アスレティックトレーナーのスキルを磨くうえで大きな財産になったのです。
一方、9万人規模のスタジアムを埋めるほど規模の大きいスポーツチームに配属された同級生は、試合中の水を運ぶなどの雑務にばかり追われ、アスレティックトレーナーらしい仕事はできなかったと聞きました。大きすぎる現場では、むしろアスレティックトレースキルを活かす仕事に関われなかったのです。
自分がやらざるを得ない環境に身を置いたことは、私にとって大きな経験になりました。
アスレティックトレーナーのスキル向上のためには、多くの経験をこなすことが重要です。さまざまな悩みを持つ方の話に耳を傾け、医師や理学療法士などと連携しながら悩みを改善するためのアプローチをする場として、メディカルフィットネス施設は最適と考えられます。
「 一人ひとりの利用者に寄り添ったサービスを提供するメディカルフィットネス施設は一般的なフィットネス施設やジムと違い上質なイメージがあります。また医療連携も大変魅力的です。そこでアスレティックトレーナーが働くことは、アスレティックトレーナーの地位向上にも役立つと思います」と語った大貫氏。
メディカルフィットネスでは、メディカル(医療)要素とフィットネス(運動)要素のどちらも加味した施設づくりが重要です。メディカルとフィットネスの架け橋となりうるアスレティックトレーナーがいることで、利用者に対してより質の高い対応が可能となるでしょう。
メディカルフィットネス施設の開業時や、人材補充を考えるときには、是非アスレティックトレーナーの採用も検討していただきたいと思います。
メディカルフィットネスナビでは、メディカルフィットネス施設でのアスレティックトレーナーの活躍について、今後も様々な角度から取り上げていきます。
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