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2024.11.12
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医学的要素を取り入れた運動施設であるメディカルフィットネス施設は、人々の健康寿命延伸やQOL向上の一助となりうる施設です。本記事では、医療法人がメディカルフィットネス施設を開業する際に確認が必須となる医療法42条施設(疾病予防運動施設)について、施設基準や申請方法だけでなく、運営のヒントもご紹介します。
Contents
医療法人は、原則として本来業務(病院、診療所の運営)以外の業務を禁じられています。しかし、医療法42条によって、病院・診療所の附帯業務として運営が認められる業務もあります。
医療法42条では、医療法人が運営する附帯業務として「疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設」を認めています。そのため、医療法人は、医療法42条に定められた附帯業務としてならば、メディカルフィットネス施設を開業・運営することができるのです。
医療法42条における「疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設」=疾病予防運動施設は「医療法42条施設」「42条施設」などと呼ばれています。
メディカルフィットネスの定義は広く、広義的には、医学的要素を取り入れたフィットネス施設はメディカルフィットネスと呼ぶことが可能です。メディカルフィットネスは介護施設、自治体、一般的なフィットネスクラブ、一般企業など、どのような運営者でも参入することができます。
一方、医療法人は、医療法42条で定められた附帯業務のうち「疾病予防のための有酸素運動を行う」施設としてメディカルフィットネスの運営が認められています。医療法人がメディカルフィットネス施設の運営をする場合、医療法42条に基づいた疾病予防運動施設(医療法42条施設)の申請を行う必要があります。
42条施設は、他のメディカルフィットネス施設と同様に、厚生労働大臣認定「健康増進施設」、厚生労働省指定「指定運動療法施設」の認定・指定を取ることも可能です。
42条施設と健康増進施設・指定運動療法施設は要件が似ていますが、42条施設は医療法に基づいた施設であり、健康増進施設・指定運動療法施設とは別のものです。これらの施設は混同されがちですが、切り分けて考える必要があります。42条施設の認定を取得しても、健康増進施設・指定運動療法施設の認定・指定申請は別に行う必要があることは留意すべきで点しょう。
「指定運動療法施設」の指定を取ると、諸条件を満たす利用者の施設利用料が医療費とみなされ、医療費控除を受けられるようになります。健康増進施設、指定運動療法施設の認定・指定取得を視野に入れる場合は、さまざまな要件を満たす施設づくりが求められます。42条施設の開業前から、健康増進施設・指定運動療法施設の認定・指定取得についても十分に検討して進めることをお勧めします。
厚生労働大臣認定「健康増進施設」、厚生労働省指定「指定運動療法施設」についてはこちらもご参照ください
メディカルフィットネス開業前に知っておきたい健康増進施設の認定制度|メディカルフィットネスナビ
厚生労働省は、医療法42条施設の施設基準を以下のように定めています。(※1)
・職員に関する基準
1.健康運動指導士その他これに準ずる能力を有する者
・設備に関する基準
1.トレッドミル、自転車エルゴメーターその他の有酸素運動を行わせるための設備
2.筋力トレーニングその他の補強運動を行わせるための設備
3.背筋力系、肺活量測定用具その他の体力を測定するための機器
4.最大酸素摂取量を測定するための機器
5.応急の手当てを行うための設備
・運営方法に関する基準
1.成人病その他の疾病にかかっている者及び血圧の高い者、高齢者その他の疾病予防の必要性が高い者に対し、適切な保険指導及び運動指導を行う施設として運営されること。
2.附置される診療所は、施設の利用者に対する医学的な管理を適切に行えるよう運営されること。
3.会員等の施設の継続的な利用者に対して健康診断、保険指導及び運動指導を実施すること。
4.会員等の施設の継続的な利用者に対して健康記録カードを作成し、これを適切に保存、管理すること。
また、42条施設で義務づけられている、42条施設に附置される診療所については3点の規程があります。
1.医療法第12条の規定による管理免除又は2か所管理の許可は原則として与えないこと。
2.診療所と疾病予防運動施設の名称は、紛らわしくないよう、別のものを用いること。
3.既設の病院又は診療所と同一の敷地内又は隣接した敷地に疾病予防運動施設を設ける場合にあっては、当該病院又は診療所が疾病予防運動施設の利用者に対する適切な医学管理を行うことにより、新たに診療所を設けなくともよいこと。
既に診療所・病院などの医療機関を運営しており、医療機関に隣接する形で42条施設の建設・開業をお考えの場合は、特に3.の規程に反した施設とならないよう注意が必要です。
医療法人がメディカルフィットネス施設を運営するうえで必須となる42条施設の申請を行なうためには、都道府県知事から定款変更の認可を得る必要があります。定款変更にまつわる手続きは手間もかかり煩雑なものとなるため、開業の準備は計画的に取り組むことが求められます。
※1 医療法第四十二条第一項第四号及び第五号に規定する施設の職員、施設及び運営方法に関する基準(平成四年七月一日 告示)
医療法人が医療法42条に定められた附帯業務を始める場合、開業前に定款の変更が必須です。
定款の変更には、施設所在地の都道府県知事の認可を受ける必要があります。定款変更の具体的な手続きは都道府県によって異なります。
以下に記載する内容はあくまで一例であり、実際の手続きにあたっては、都道府県の指示に従って手続きを行ってください。
多くの都道府県で、医療法人が定款変更の申請をする前に事前調査や仮申請を実施しており、認可が二段階になっていることがほとんどです。事前調査・仮申請後に追加書類の用意や補正を経て本申請を行い、事業所の所在地である都道府県知事の認可を受けて開業するケースが一般的です。
定款の変更には、各都道府県が指定した様式の定款変更認可申請書、敷地および建物の構造設備の概要、施設の平面図、土地・建物に係る登記簿謄本の原本、定款変更後2年間の事業計画書と予算書、直近会計年度の税務申告書一式などの提出を求められます。その他の書類も各都道府県から要請を受けた場合は提出の必要があります。
定款の変更には1~3ヶ月程度かかるため、予定した時期に開業するためには、余裕をもって手続きを進めるべきでしょう。
医療法人が運営するメディカルフィットネス施設は医療法42条の施設基準を満たしているため、利用者は十分な設備を活用して安心・安全な運動を実施できます。
また、医療法人がメディカルフィットネス施設を運営することで、医療機関にもさまざまなメリットがあります。メリットのひとつに生活習慣病治療にともなう診療報酬があります。高血圧、高脂血症、糖尿病を主病とした生活習慣病の指導管理料は、患者1人につき1ヶ月1,000点(10,000円)以上が算定できます。その患者様に疾病予防運動施設(42条施設)を利用していただくことで、健康増進の役に立つだけでなく、42条施設の収入と病院やクリニックの増収にもつながります。
また、医療機関は基本的に広告宣伝ができませんが、42条施設は一般的なフィットネス施設のようにさまざまな媒体に広告を出し、施設を宣伝することが可能です。その際、42条施設と同じ運営元の病院・診療所を紹介することで、病院・診療所の知名度向上にも貢献できます。
42条施設を利用する利用者の目的は、生活習慣病治療や予防、健康増進、リハビリ後の運動など多岐にわたります。42条施設を立ち上げる際には、医療機関とどのように連携し、どういった利用者の方に対してどんなサービスを提供するのか、明確にすることが大切です。
医療機関と42条施設の両面から利用者一人ひとりの健康を支えられることは、42条施設ならではの利点です。医療機関の患者が42条施設を利用することもあれば、42条施設の利用者が身体の不調を覚えた時に提携医療機関を訪れることもあるでしょう。医療法人が医療機関と42条施設を運営することには、相互にメリットがあると考えられます。
医療法人が運営するメディカルフィットネスである42条施設は、健康寿命延伸・QOL向上などの地域の健康課題解決の一助となりえます。42条施設を医療法人が運営することは、地域、ひいては日本全体の健康増進に資する可能性を秘めているのです。
以上のことから、42条施設は地域の皆様の健康を支えるだけでなく、医療機関にもメリットをもたらす施設と言えるでしょう。
しかし、医療法人がメディカルフィットネス施設を開業し、経営を安定させるうえでは、42条施設ならではのいくつかの課題があります。その中でも重要な課題に、42条施設単独での黒字化できていない施設が多いことが挙げられます。
平成30年に公益財団法人日本健康・体力づくり事業財団が行った調査によると、医療法42条施設を運営する医療法人のうち、収支状況に関して「おおむね黒字」と回答した施設は全体の9.7%にとどまっています。(※2)
参照データ(※2)をもとにメディカルフィットネスナビが作成
収支が均衡を保っている施設は12.5%、おおむね赤字の施設に至っては64.6%と全体の過半数を占めています。これは「地域貢献」「医療サービスの向上」を目的に42条施設を運営されている医療法人が多く、42条施設で利益を追求していない施設が多々あるためだと考えられます。
42条施設を開業する理由は医療法人によってさまざまですが、42条施設を安定して運営していくことが、利用者の継続した利用につながり、末永く地域住民の健康を支えていくことにつながるのではないでしょうか。42条施設の開業を考えるうえでは、事業継続のためにも黒字化に向けた取り組みが求められています。
※2 公益財団法人日本健康・体力づくり事業財団 医療機関と健康運動指導士等との連携による運動療法の在り方に関する調査・研究報告書(2021年5月1日参照)
42条施設が苦戦を強いられている背景のひとつに、医療法人におけるフィットネス人材の不足があると考えられます。
医療法人内にフィットネス施設の開業・運営に精通する人材がいることはごく稀です。また、医療法人が42条施設を立ち上げる際、フィットネス施設としての設備・サービスなどの構築、提供方法の検討が不十分であるケースや、広告宣伝のノウハウがないことで集客につまずいてしまうケースもあるようです。
このような事態を未然に防ぐためには、入念な事前調査、フィットネス施設やメディカルフィットネス施設に詳しい人材の早期確保などによって、フィットネス施設の実態やフィットネス施設の運営方法を具体的に精査する必要があります。広告宣伝についても、信頼できるパートナー企業を見つけることで問題解決を図ることが求められるでしょう。
医療法42条施設(疾病予防運動施設)は医療機関と42条施設どちらにも良い影響をもたらし、年齢や疾病の有無を問わずさまざまな方に利用していただくことで、地域の皆様の健康に貢献できる素地を持っています。
しかし認可のためには定款変更など煩雑な申請が必要であり、参入障壁が高い現状です。また、42条施設を開業しても、さまざまな問題から思い描く運営ができないことや、黒字化できない場合が多くあります。黒字化できなければ施設の継続も難しくなるかもしれません。
42条施設とそこで勤務するスタッフのポテンシャルを最大限発揮するためには、開業までに42条施設、メディカルフィットネスについに十分理解し、綿密な計画を立てて開業・運営を進めることが望ましいでしょう。
メディカルフィットネスナビでは、医療法42条施設の開業を検討されている医療法人の皆様のサポートも行っています。お気軽にお問い合わせください。
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